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きょうも良き日


by neko

「ゲド戦記」本


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 どうも、ゲド戦記が好きなようだ。

 ピンク色の本は、非売品で映画のDVD発売キャンペーンで配布していたのをジブリのショップでもらったのだ。糸井重里がプロデューサーとなっていて、発行はディズニージャパンというもの。
 はじめに、中沢新一が語った話を、まとめた文章が載っているが、これが「ゲド戦記」入門としてはかなりいいものだと思う。
 映画がわからなかった、という人も、これから本を読もうという人にも有効だと思う。とくに男女、家族関係からの視点は現代的でとても面白い。
 「本当の人生を一緒に歩いていく相手とは、若い性的な欲望や幻想の延長によって結ばれてはいけないのです。いろいろな体験を経て、幻想などもはや生まれないような状態になってはじめて人間として相手を確かめる。」と、(魔法使いでも巫女でもなくなった)ゲドとテナーが長い別離を経て結ばれ、竜の子テルーを家族としていきていく姿を意味づけている。

 中沢は、最後に映画になったゲド戦記に触れている。原作の形をとどめていない映画に原作者は気に入らないだろうとしながら、「アジア的解釈」のひとつだと、肯定的に語っている。
 「白人世界の伝統的な価値観や世界観に抗うようにして60年代末に生まれてきた原作にたいして、映画版は、日本のある種の神話的な世界像からそのまま生まれてきた作品です」
 神話的、というあたりが中沢らしい言い方だけど、わたし的にいうなら、日本現代の家族問題が大きく反映しているということだろうと思う。
 力を失った父親、反抗的で打ち解けない娘、父を殺し悩み傷ついた息子、それに自らも世間から疎まれる存在でありながら、家族を見守り、それぞれの闘いに送り出す母親。
 これほど今の日本の家族を象徴する4人はないだろうと思う。

 この本の後半は、さまざまな人が書いていたりインタビューに答える形で「ゲド戦記」を語っている。中でも訳者であり原作者に近い清水真砂子がル=グウィンについてインタビューを受けている中で、映画化にあたってコメントを求められている答えがいい。
 「詩人にうたうな」とはいえない、と映画作家の解釈の自由に賛成している。
 ル=グウィンが自身のwebpageでジブリ映画について見解しているが、これも読んでおくとDVDで見返すときによいかもしれない。

http://hiki.cre.jp/Earthsea/?GedoSenkiAuthorResponse

 さて、写真に写っているもう一冊だが、「ほんとうのゲド戦記」。
 翻訳者に挑戦状か、と思ってよんだが、センセーショナルなのはタイトルだけで、いたってマジメな英語の読本風である。原作は中学英語で理解できるから、というわけでこれぞという箇所を原文で読ませ、著者自身の訳をつけ、言葉の意味を詳解してくれる。
 この本は、どちらかというと、全巻を読破してから読んだほうがいいと思う。

 ついでだが、写真に2冊の本のほかに、怪しいケモノが撮影されているが、Alieというネコんちのネコである。
by kanekonekokane | 2007-09-08 14:19