槍ガ先からおりてくると、美束市瀬の集落にたどり着いた。
道路沿いでタラの芽やわらびを売っているおばさんと出合う。
美束の村々を通り過ぎていくと野の仏たちにたくさん出合う。
きっと、トラクターを持っている人に「田起し」をお願いしている札なんだろう。「お願ひします」の書き方に律儀さが伝わってくる。
車をおいた寺本まできたら、この犬に出合った。皮の首輪が生々しい。
何を見ているんだろう?
犬君は街のある下流のほうではなく山の奥のほうをずっと見続けている。
だれかが帰って来るのかもしれない。もう何年も前に山に入った人が。