一部の歌のステージから着替えて、メイクの青木さんに伴われて上手へ急ぐ竹内久恵さん。
わたしが台本と演出をしたものだが、倉知竜也氏の作曲が台本に深い陰影を付けてくれて、稽古を重ねるたびに発見があってすばらしい体験になった。
オペラが主というより、コンサート全体の中の一つであり、舞うことも大事にした。
女性の自立を、つまりは男を含めた人間の自立へのもがきを描く、というのはいつの時代も大きなテーマだ。
カルメンもそのもがきの結果としての殺人だし、「こうもり」でも他愛のないドタバタ喜劇のなかで、かすかに芽生えるアデーレの「個の確立」を作者は見逃していない。
安珍と清姫もまたロミオとジュリエットであるし、タミーノとパミーナなのだろう。