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きょうも良き日


by neko
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鳥の劇場


1月来、大学のオペラ、三重のオペラ、イベントにGONNAのコンサート、と
落ち着かない日々が続いた。
4回生のオペラが終わって、三重のオペラの稽古がいよいよという頃、
1月の末に、急に思い立って鳥取へ芝居を見に行った。

鳥取市鹿野町の小学校が新築移転して、その跡地に残った学校の体育館を拠点に「鳥の劇場」という劇団が活動している。
鹿野は鳥取市といっても、小さな城下町で温泉があるものの周辺の温泉や観光地のように観光客が来るわけもなく、これといって産業もなさそうだ。
こんなところで劇団が活動している。しかも一週間。さらに驚くことはチケットが2000円なのだ。
地域に根ざしているこの劇団を、どうしても観たくなった。
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ロビーには地元の人がかなり居る。
現代劇のロビーでこういう風景はなかなか無いと思う。

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演目はブレヒト「母アンナの子連れ従軍記」(「肝っ玉おっ母と子どもたち」の新訳)。
17世紀、ハプスブルグ家を巡る宗教戦争が舞台。
アンナは兵隊相手の商売をしている。
戦争があればこそ儲かる。戦争が終わると困るわけだ。
が、自分の子どもは戦争に行かせたくない。
そこに徴兵係がきて、息子は軍隊にはいりやがて戦死する。
アンナはそれでも戦争で生きていかなければならない、、、、

この芝居は、簡単ではない。
アンナは売春婦だったらしく、3人の子どもたちはそれぞれ父が違う。
旧教と新教など、かなりややこしい背景があり、
その上、衣装や美術は、17世紀という時代を説明しないで作っている。
この芝居を読み取るのは易しくないと思う。

この芝居を、普段、演劇など接していないだろうと思われる人たちが観ている。
セリフに反応して、客席のおじさんがしゃべったりする。
畑仕事の帰りかと思われるような、ほおかぶりのままのおばさんが居る。
ブレヒトがここにいたら、日本のこんなところで自分の理想のひとつが成っていることを発見するだろう。

わたしは、芝居の内容は期待していなかった。
しかし、演技も演出も水準を超えている。
小劇場が果たした演劇の革新のひとつの成功例がここにあるようにも思えた。

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鳥のカフェというロビー。
きれいなソファや豪勢な緞帳、立派なプロセニアムの劇場なら、この人たちは足を向けなかったと思う。
このおじさんやおばさんは、この小学校で学んでいたのだ。
そして、いままた、ここで学んでいるのだ。

もらったパンフレットには「鳥取の観客に見せたい演劇」という企画があり、東京の劇団がくるようだし、海外の劇団も招聘している。
さらにスゴイのは「家族・職場・ご近所演劇 お助けプロジェクト」というものである。
「いろんなことは、相談しながら決めましょう。こちらも手探りなので、その点、ご容赦ください。」という、
ことわり書きがシビレる。

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3時間の芝居のあと、2時間のロビートークがあった。
ドイツから来た演劇研究者や鳥取大学芸術センターの研究者の話が聞けた。
これはこれで面白かったが、「母アンナ、、、」のことは、ほとんど触れられなかったのは残念。

「地域に根ざす」
GONNAもそういう気持ちで名古屋の片隅で活動しているのだけど、
鳥の劇場から、大きな励みをもらった。
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by kanekonekokane | 2010-03-29 21:24