防音室の中では太鼓が稽古をしているので、マリンバは防音室の出入り口のところに楽器を出しての練習となる。
暑いから騒鼓のドアを開け放ち、蚊取り線香をたいて何度も何度も同じフレーズを弾き込んでいる。
音は、2ブロックも3ブロックも離れた路角にも伝わっていく。
工場の騒音、トラックのエンジン音がなくなり静まり返った夜の工場の街にマリンバが響く。
無機質な工場の外壁が良い反響板になるのだろうか、結構な残響がある。
すこし不思議な音の情景である。
夜10時、満月に近い月が音騒鼓と隣の工場の間からゆっくりと上ってきた。